ソーシャルスキルトレーニングの前に。発達障害児を理解するためのアセスメント
ソーシャルスキルトレーニングを行う際に大切なのが、一人ひとりに合った内容を、一人ひとりに合ったレベルに合わせて行うということです。
ソーシャルスキルの指導内容や指導方法には決まったパターンがあるわけではなく、その子どもの特性や状態に合わせて行います。そこで必要なのが、一人ひとりの特性や状態などを理解するためのアセスメント(実態把握)です。
ソーシャルスキルの指導内容・指導方法は一人ひとりの困難の背景(認知特性や障害特性)をきちんとアセスメントし、その子に適した指導を行う必要があります。
今回は、ソーシャルスキルトレーニングを行う前の、アセスメント(実態把握)についてみていきましょう。
アセスメントの方法
①行動観察法
直接本人を見て観察する方法。学習場面、休み時間、教室移動、休職や掃除のときの本人の様子を観察し、アセスメントを行う。
②面接法
関係者から情報を聞き取る方法。生育歴、現在の状況、方針などを子どもと関わっている関係者からそれぞれ話を聞き、アセスメントを行う。
③心理検査法
WISC-IV DN-CAS K-ABCなどの心理検査を行い、アセスメントを行う。地域の発達障害サポートセンターなどで心理検査は受けることができる。
④チェックリスト法
各機関で作成されたチェックリスト(LDIやADHD-RS、CBCL-TRFなど)でアセスメントを行う。
このように、子どもを一つの側面から観察するのではなく、様々な角度から観察することが必要です。習い事の先生や、学校の先生に様子を聞くことで、家では気付かなかった一面が見えてくるかもしれません。
社会性の弱さに関わる障害特性
ソーシャルスキルトレーニングの内容を決めていくにあたって重要になるのが、障害特性の把握です。どこに弱さがあり、どういったことに困り感を感じているのか、どういったことができるようになればその困り感を解消することができるのかを考えることによって、指導内容や方法、目標なども変わってきます。おさえておきたい障害特性は、以下の6つです。
①知的能力
知的理解力が低い子どもは、スキルの学びがゆっくりだったり、友だち同士の会話の流れが理解できず、ついていけなかったりします。
②言語能力
言語の理解や言語での表現などの言語能力に弱さがある子どもは、自己表現が苦手です。言いたいことがあっても言語に変換して発することができずに困り感を感じているケースがあります。
③ジョイントアテンション・心の理論
他者と注意を共有したり(ジョイントアテンション)、相手の気持ちを理解したり(心の理論)することが苦手な子どもは、状況に合わせた行動や人に合わせることが苦手です。
④こだわりや切り替え
自分の考えや、自分なりの行動パターンにこだわりやすい子どもは、融通が利かず、うMacスキルをはっきできません。また、行動や考え、気持ちの切り替えも苦手です。
⑤注意集中・衝動性のコントロール
不注意・衝動性はADHDだけではなく、LDや自閉症スペクトラムの子どもにもよく見られます。わかっているのに、不注意なミスを繰り返したり、行動を抑制できなかったりします。
⑥情緒の不安定
家庭や学校での問題から、気持ちの面に問題を抱えている子どももいます。情緒不安定だったり、注意をされても上手に受け止められないことが多いです。
このように、発達障害を持った子どもは、様々な特性によってソーシャルスキルに問題を抱えていることが分かります。
いろいろな面から子どもの特性や困り感を理解し、どういった力をつければ、その困り感が解消するのかを考えることがソーシャルスキルトレーニングを行っていく前の第一歩です。
育児中の最大の敵はこいつだ!子育て中のイライラの原因
先日、こんなことがありました。
ねんねの時間。次男(生後7日)が泣いて、長男(2歳2ヶ月)がそれに反応してなかなか寝なくて、自分はまだお風呂にも入れず汗ベタベタ。
— ka7a-mama (@ka7aa1988) 2017年7月19日
久々にうぁーーーってなった。
子育て中の皆さんには「あるある」ですよね。
うぁーーーってなったり、
イライラしたり、
そんな自分に自己嫌悪になったり…
そんなka7a-mamaの子育てにおいての最大の目標はこちら!
「子育てを楽しむ」
「子育てを楽しむ」
— ka7a-mama (@ka7aa1988) 2017年7月24日
確かに子育ては大変なことが多い。けど、楽しいことも幸せなこともたくさんあることは確か。大変なことに焦点を当てるか楽しいことに焦点を当てるか。どうせなら楽しいことに焦点を当てて「楽しもう」とすることが大事かなって私は思う。、
でも、うぁーーーってなったり、
イライラしたり、
そんな自分に自己嫌悪になったりしてるときとか、
全然「子育てって楽しい*\(^o^)/*」なんて気分ではさらっさらありません。
「楽しい」方に焦点を合わせられないのです。
「大変(T_T)大変(T_T)もういやーーー(T_T)」
では、何が「子育てを楽しむ」ことを阻もうとするのか…育児中の最大の敵とは…??
育児中の最大の敵は・・・?
ズバリ!睡眠不足です!!!
睡眠がきちんと取れてるときだったら、
ちょっと長く泣かれても、
イヤイヤ期真っ只中の2歳児が「いやいや」言ってようと、
陰でごちゃごちゃと変なことをやってようと、
「泣きたい時だったんだね〜。」
「まぁそういうときもあるか。」
「やりたかったんだね〜。」
って流せるんです。
でも、
あまり寝れてないとき、
子どもとお昼寝しようと思ったのにできなかったときなどの睡眠不足のときは、
こっちの余裕がなくて、いろいろなことを流せないんですよね。
子どもにも、夫にも、そして、「暑い」とか「散らかってる」とかいう現象にもイライラしてきます笑
育児中の敵を倒すためには?
子どもが1人しかいない場合は、簡単です。
家事や旦那さんのお世話を放り出して、睡眠優先にしましょう!
少し罪悪感があるかもしれませんが、睡眠不足になって、イライラして、子どもや夫にイライラをぶつけてギスギスした雰囲気の家庭より、平和で穏やか、ママが笑顔でいる家庭の方がいいですよね!子ども小さい今の時期だけ。と割り切ってしまいましょう!
子どもが2人以上いる場合は、1人ではなかなか対処できませんよね…下の子が寝たと思ったら上の子の遊び相手。上の子のお昼寝タイムに下の子が泣き出す…なんてよくあることです(T_T)
二人育児真っ只中の私が、今一番もらって嬉しいプレゼントは、「自由な時間」です!
世の中のパパさん。オムツ替えだけ、ミルクやるだけ、ちょっと遊び相手になるだけ、などのちょこっとお手伝いサポートではなく、1時間でもいいのでゆっくり寝られる環境を作ってあげることをオススメします。
「子供が産まれると女性は変わってしまう」
そんな言葉を聞いたことがありますが、女性だって好きでイライラしているわけではありません。毎日睡眠不足の中慣れない育児をしていると余裕がなくなって、イライラなんてしたくないのに家族にあたってしまうなんていう女性もいると思います。
「結婚」にあぐらをかいているだけの女性も多いような気もしますが・・・(^^;)笑
二人育児が始まって睡眠不足気味のka7a-mamaでした!
社会性を育むためのソーシャルスキルトレーニング(SST)って何するの?
ADHDや自閉症スペクトラムなどを持った発達障害児は、人とのコミュニケーションや距離の取り方などが分からず、社会性に問題を抱えているケースが多いです。
また、発達障害児に限らず、人との接点が少なくなっている現代では、他人の気持ちを考えたり、推測したりすることが苦手な子どもも多くなっている気がします。
そんなときに効果的なトレーニング方法が「ソーシャルスキルトレーニング」で「SST」とも言われます。
いったいどんなトレーニング方法なのでしょうか。
ソーシャルスキルトレーニングとは?
1.ソーシャルスキルとは?
ソーシャルスキルとは、人間関係を上手に営んでいくための技能のことです。
私たちは、日常的に他人と関わり合う中で、様々なことを無意識のうちに考えながら行っています。
例えば、初めて会った人と挨拶や自己紹介をしたり、会話する人との距離の取り方や、話す声の大きさなどです。これらは、人間関係を築き上げる中で必要な能力です。もし、会っても挨拶しない、話そうとしても必要以上に距離の取り方が近すぎたり遠すぎたり、または、声が極端に大きい小さいなどがあると、なかなかその人と会話したいという心情にはなりませんよね。
このように人と関わる上での基本的なことから、会話の中に冗談を入れて場を和ませるなどといった能力をトレーニングすることを「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」と言います。
2.ソーシャルスキルを完璧にする必要はない!?
ソーシャルスキルは、人とかかわり合う中で必要な能力ですが、必ずしも得意にならなければならない能力でもありません。一人ひとりの人間関係の築き方はありますし、苦手なことを得意にしようと頑張る必要もありません。ソーシャルスキルの得意不得意は、障害有る無しに関わらず個人差が大きいものです。
しかし、他人に不快感を与えるような行動は改める必要があります。他人に不快な思いをさせることがない自分のスタイルを身につけることが最終目標と言えるでしょう。
3.ソーシャルスキルトレーニングの流れ
ソーシャルスキルトレーニングは、①教示、②モデリング、③リハーサル、④フィードバック、⑤般化の5つを組み合わせながらプログラムを組み立てていきます。一つずつ見ていきましょう。
①教示・・・言葉や絵カードを使って教える。
②モデリング・・・親や教師、友だちなどが、手本となる振る舞いを見せる。
③リハーサル・・・ロールプレイングなどで実際にやってみる。
④フィードバック・・・行動を振り返り、褒めたり、修正を加えたりする。
⑤般化・・・どんな場面でもできるようにする。
このような流れでソーシャルスキルを学んでいくのですが、かの有名な山本五十六のこの言葉に、共通する部分を感じることができます。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
この言葉は教育の本質を表しているんでしょうね。
発達障害児の育て方ポイント!スモールステップ方式で考えよう
発達障害をもっていると、日常生活に困難を感じることが多く、身の周りのことができなかったり、宿題がはかどらなかったりします。
このようなときに決して放置せず、どうやったらその課題をクリアできるのかを大人が一緒に考えてあげることが大切です。
そのときに重要なのが「スモールステップ」の考え方です。
詳しくみていきましょう。
発達障害児の育て方ポイント
苦手なことは大人が支援しよう
計算や音読、作文などの宿題がなかなかはかどらないときには、自力で最後までさせるよりも要所要所で手伝ってあげる必要があります。
発達障害を持っていると、普通でも気が散りやすく、集中することが難しい場合が多いです。
その上苦手な課題を与えられ、できないことが続くと、「宿題をしよう」という意欲をなくしてしまいます。
支援は徐々に減らしていこう
そうはいっても、できないことを全て大人がやってあげても、それはそれで子どものためにはなりません。
一人でできないところだけを援助するようにし、本人の自立を促していくことが大切です。
また、子どもの意欲は、「できた!」という達成感を感じることで引き出されていきます。
常に大人に手伝ってもらっていると、「自分でできた」という達成感を感じにくく、「もっとがんばろう」といったやる気につながりません。
例えば、音読の宿題が苦手なのであれば、最初の一回は一緒に読んであげたり、一行ずつ交代で読んであげたりするといいでしょう。
しかし、常にその方法を続けるのではなく、最終的には一人で読めるように少しずつ支援を減らしていくことが必要です。
そして、少しずつできるようになっているところは、しっかりと子どもに伝え、成長していることを子どもが感じられるようにしましょう。
スモールステップとは?
スモールステップとは、最終目標に至るまでを細かい段階に分け、その都度小さな到達目標を定めます。
その小さな到達目標をひとつずつ乗り越えることで、最終ゴールに向かわせる方法のことを言います。
発達障害児にとって、大きな課題を与えることは「できない」が重なり、意欲の低下や自己肯定感の低下を招きます。
少し頑張れば到達できるだろうというところに目標を定め、一段ずつ階段を上っていくように成長を促すスモールステップの考え方はとても重要になってきます。
スモールステップのポイント
・目標は到達しやすいように低めに設定しましょう。
・一つのステップが達成できたら大いに褒めましょう。
・失敗してもしかったり責めたりしないようにしましょう。
・次のステップがなかなか達成できないときには、間にもうワンステップ加えましょう。
。長期的に見通しながら進めましょう。(ステップは後戻りしてもOK!)
最後に
このようにスモールステップの考え方を基本にしながら、子どもの「できた!」「分かった!」が一つでも増えるように支援することが大人の役目ではないでしょうか。こういった一つ一つの積み重ねから、子どもは自己肯定感を感じ、夢を持つことができるのです。
発達障害児の育て方ポイント!分かりやすい言葉で簡潔に伝えよう
「何度も言ってるのになんでわからないの!?」
「どうしてそんなことをするの!?」
こんなことを思って、日々イライラしていませんか?
もしかしたら、子どもにはあなたの言っていることが正しく伝わっていないかもしれません。
今回は、発達障害のある子どもへの伝え方についてまとめていきますね。
発達障害児の育て方ポイント 〜伝え方〜
注意を向けさせよう
発達障害を持っていると、必要な情報を多くの情報の中からピックアップすることが苦手です。 ですから、何かしている途中に注意をされたところで、内容は頭に入っていないことが多くあります。
まずは、注意を向けさせ、聞く準備をさせることが必要です。 声をかけるだけで気づかないことがあるため、肩や手に触るなど、身体的な刺激を与えることで注意を促します。
また、指示をする時も、子どもの視線がどこを向いているかに注目しましょう。 できるだけ目を合わせるようにしてから指示内容を伝え、その後きちんと伝わっているか、復唱させて確認してみましょう。
復唱させてみると、意外と伝わっていないことが分かると思います。また、復唱はできても意味が分かっていない場合もあるのでそこも注意が必要です。
指示は一つずつ、簡単な言葉で
「〜だから○○したあとに××してね。あ!これも忘れないようにね!」といった指示の仕方では、なかなか伝わらないでしょう。発達障害をもつ子どもはワーキングメモリーの働きが弱いことが多いので、一度にたくさんの指示を理解し記憶することが苦手です。ですから、指示内容は一つに絞り、「○○してね」と、分かりやすく簡単な言葉で伝えることが大切です。
「何時だと思っているの?」というような遠回しな表現も、普通に「○時!」と返ってくることがあります。発達障害を持っている子どもは、他人の意図を読むことが苦手です。分かりやすく簡単な言葉で「早く寝なさい」が一番分かりやすい指示でしょう。大事なメッセージを短い言葉で伝えるようにしましょう。
否定形はつかわない
「だめ」「やめなさい」といった否定形の言葉だけだと、何をしたらいいのか分からない場合があるので、できるだけ控えましょう。
また、「ふざけないで!」「からかってるの!?」などといった、抽象的な声かけも具体的にどうしたらよいかわからない子どもには伝わりにくいです。
その代わりに、「◯◯しなさい」「◯◯してほしいな」といった具体的な指示やアドバイスを出す方がいいでしょう。
視覚情報を活用する
発達障害児の中には、聴覚情報よりも、視覚情報の方が優位に働く特性を持つケースもあります。言葉で何度言われても変わらないのに、イラストや文字が書かれた紙を一瞬見ることで行動が変わるケースもあります。
ADHDの子どもの場合、聴覚情報だけでは注意が向きにくいので、同時に絵カードなどの視覚情報を活用すると注意が向きやすくなります。
また、学校や園と協力し、よく使う指示内容については共通した絵カードを使うと、子どもは混乱することなく指示を受け入れやすくなります。
最後に
指示の伝え方を少し変えるだけで、子どもへの伝わり方は劇的に変わります。一度試してみてくださいね。
ADHDの投薬・薬物療法について。効果は?体への影響は?
今回はADHDの治療として行われる薬物療法について詳しくみていきたいと思います。
「ADHDの治療にお薬を使う」と初めて聞くと、不安に感じたり、嫌だと思ったりする保護者の方は多いです。
以前の職場でも「薬は使いたくない・・・」と拒否している保護者の方もいました。
ではそういったときに参考になるように、薬の種類や薬の効果、いつまで飲み続ければいいのかなど詳しく調べてみました。
薬の種類
コンサータ(一般名はメチルフェニデート)や、ストラテラ(一般名はアトモキセチン)という薬が有名です。ADHD特有の脳の働きを改善させることはできませんが、薬が効いている間は、ADHDの行動特性である多動性や衝動性などの症状は抑えることができます。
薬の効果
効果は劇的で、服用したADHDの人の8割の患者が薬を服用すると集中することができたり、落ち着いて行動できるようになることが分かっています。
「薬」と聞くと、不安を感じられる方も多いですが、薬を使うメリットもあります。
一つは、服用した方が落ちついて適応行動がとれるので、褒められる機会が多くなり、自信をもつことができることで、二次障害を引き起こしにくいことが分かっています。ADHDの子どもは、なかなか自制心がきかずに我慢ができなかったり、衝動的に動いてしまうことで叱られることが多いです。本人も落ち着いて行動したいのに、体が勝手に動いてしまい怒られる。といったサイクルが続くと、二次障害になってしまうケースがあります。
二つ目は、服用することで集中力が増す、忘れ物が減る、考えてから行動できるようになるなど、具体的にできることが増えます。自分の状態が良くなることで、生活の困難が減り、学習成果が上がったり、友人関係も好転したりすることもあります。
薬の副作用
安全な薬とされていますが、人によっては副作用が出る場合もあります。頭痛や腹痛、食欲不振、不眠などが症状として報告されています。通常はそれほど強く現れることはありませんが、もし万が一副作用が現れた場合は、直ちに服用を止め、医師に相談してください。
一生服用し続けないとダメ?
薬を飲むと集中力が増し、薬の効果が切れるともとの状態に戻ってしまいます。それは、ADHDの脳自体を治療することは難しいからです。
ということは、一生薬を服用し続けなければならないのかというと、そんなことはありません!成長とともに次第に薬がなくても自分で感情や行動を抑制することができるようになるケースがほとんどです。
最後に
このように、副作用は少し気になりますが、薬を使うメリットも十分にあると思います。10歳前後になってくると、子どもは自分の体の状態も分かるようになってくるので、本人と相談しながら決めていくのもいいのではないでしょうか。
以前勤めていた小学校の子どもの中には、薬を飲み始めたことがきっかけでできることが増え、自己肯定感の高まりを感じられたケースもありました。「頑張ったらできるんだ!」「自分はだめな子じゃないんだ!」そう子どもが思えるきっかけをたくさん作ってあげることで、様々なことに挑戦できるようになり、子ども可能性も広がります。
「薬で治療する」というよりは「薬をうまく利用する」といった形が理想ですね!
LD(学習障害)の症状・困り感とは?勉強へのやる気がないのはこれが原因?
LD(学習障害)児にとって、学校教育は勉強へのやる気を失わせる大きな原因の一つになっている可能性があると言われています。それは、従来行われているような、同じ漢字を何度も書かせて覚えさせたり、ひたすら計算問題を解かせたりする学校での勉強方法では、やってもやっても成果が出ないため、子どもはやる気を失ってしまうことがあります。このようなやる気が失われた状態を学習性無力感と言います。
学習性無力感とは、「どうせやってもできない」「自分には能力がないんだ」という考え方から、新しいことに対してうまく対処しようとしないことをいいます。学習性無力感になってしまうと、新しいことを学ぶ楽しさも感じられず、勉強自体が嫌いな子どもになってしまいます。
このような原因となってしまうLD(学習障害)とは一体何なのでしょうか?どんな症状があり、どんな困り感を感じているのでしょうか?
LD(学習障害)の症状・困り感とは?
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示すさまざまな状態をさすものである。
このようにLD(学習障害)は、1999年に作成された文部省によって定義されていますが、実際はそれ以上に多岐にわたった症状が現れることも報告されています。
今まで「LD(学習障害)」の定義は知っているし理解もしていましたが、今回のタイプ分けやより詳しい症状や困り感を知ることで、なんとなく自分の中ですっきりした部分があるので、ここに記しておこうと思います。
LD(学習障害)のタイプ
LD(学習障害)といっても、様々なタイプがあります。これらのタイプは、実態に応じた効果的な手だてを考えるヒントになることがあります。
まずは、LD(学習障害)児にはどういったタイプがあり、どのような症状や困り感があるのかを見ていきましょう。どれか一つのタイプに当てはまるというわけではなく、いくつかのタイプの特徴が見られる子どももいます。
行動上の困難によるタイプ
- 学習の困難(主症状)・・・読み、書き、算数にみられる特異な学習能力の困難
- ことばの困難(主症状)・・・聞く、話すなどのコミュニケーション能力にみられる困難
- 社会性の困難・・・ソーシャルスキル、社会的認知能力にみられる困難
- 運動の困難・・・協応運動、運動企画能力にみられる運動面の困難
- 注意集中・多動による困難・・・注意の集中、持続力の障害や多動などの行動上の問題
知覚・認知の特徴によるタイプ
- 聴覚知覚の困難・・・がやがやした場面で話を聞いたり、たくさんの声の中から先生の話し声を聞き分ける力に弱さがみられる。短期記憶の弱さが加わることもある。
- 視知覚の困難・・・目に入る多くの情報の中から、今一番必要なものに注目する力の弱さや、空間(ものの位置関係)の認知がうまくいかない。
- 社会的知覚の困難・・・社会の中に置ける自分と周囲の人や状況などの関係を捉えるのが苦手。対人関係に影響するため、友だちとのトラブルが多くなることがある。ソーシャルスキルがなかなか身に付きにくい。
- 身体知覚の困難・・・体全体を使う動きをするとき、どのように体を動かせば良いのか分からない。姿勢のコントロールやバランスを取ることが苦手である。指を使う細かい動きが苦手である。
情報処理特性によるタイプ
- 言語性・・・音や言葉の聞き分けと理解、言語表現などの聴覚的な言語面でも問題を持つ。学習面では、文章の読解や作文に困難を示すことが多い。言語性IQが動作性IQに比べて著しく低い。
- 非言語性・・・形や位置関係、状況など視覚的に理解することが苦手で、それに伴った運動や行動面も問題も大きい。学習面では算数の両羽あ図形の概念の習得などが難しいことが多い。動作性IQが言語性IQに比べて著しく低い。
- 注意・記憶性・・・注意集中力や短期記憶能力に問題を持つ。言語性学習障害や、非言語性学習障害と重複することもある。学力の習得が記憶に頼る部分も大きいため、学力全般にわたって遅れやすい。
- 包括性・・・特定の能力に一貫した落ち込みがあるのではなく、いくつかの部分的な欠陥が重複して現れる。特徴を理解しにくく、適切な対応が得られにくい。学力面・行動面ともに深刻な問題をもつケースが多い。
学習障害の主症状は学力と言葉ですが、重複症状として社会性の困難、運動の困難、注意集中・多動による困難があげられ、これらの困難克服の支援も大切な視点です。
LD(学習障害)児は「勉強へのやる気がない」「怠けものだ」「サボっているだけ」などと捉えられがちでです。ですが、このようなLD(学習障害)の症状や困り感によって勉強へのやる気がなくなっている状態なのかもしれません。勉強へのやる気がないことを叱るよりも、どのようにサポートをすればこの困り感を解消できるのか、勉強の楽しさを伝えることができるのかを一緒に考えることの方が大切なのではないでしょうか?
発達障害児「体育や運動が苦手」な子どもにおすすめ!楽しんでできる運動ゲーム
今回は前回に引き続き、「体育や運動が苦手な発達障害児」に対する支援方法についてです。
発達障害がある子どもは、運動がとても苦手な子どもがいます。体の使い方が明らかにぎこちなかったり、手足の協調がとれていなかったりするため、運動に苦手意識を持ちがちで、徐々に運動するのを嫌がるようになり体育も見学したいと訴え始めます。ひどい場合は、外に出るのも嫌、体操服にな着替えるのも嫌という状態になることもあります。
このような発達障害児の体育や運動問題の対処法として、楽しんで体を動かせる運動ゲームをいくつか紹介していきます。
楽しくできる運動トレーニング
1.障害物をすり抜けようゲーム
机の下をくぐったり、ジャングルジムの中などを通り抜けるゲームです。このゲームでは、体の部分がぶつかったり触れたりすることが多くあるため、ボディイメージのトレーニングになります。
少しずつでもいいので毎日行うと、よりいっそう効果的です。
2.旗あげゲーム
左右に赤と白の旗を持ち、「右挙げて」「左挙げて」の言葉の指示に従って、間違えずに旗を挙げるゲームです。このゲームでは、体の左右を意識するボディイメージのトレーニングになります。
3.だるまさんがころんだゲーム
「だるまさんがころんだ」といっている間は動き、言い終わると同時に体の動きを止めるゲームです。指示にあわせて体を動かしたり止めたりするトレーニングになります。
筋肉の緊張や弛緩のコントロールが苦手な子どもは、急にぴたっと動きを止めることができません。自分の体の動きをコントロールする練習になります。
4.ストレッチ
姿勢や動きがぎこちない子どもには、関節を伸ばすトレーニングが有効です。腕や足のストレッチに取り組んでみましょう。
また、ストレッチを行う際に、今ここを伸ばしているんだよと伝えることで、ボディイメージを作るトレーニングにもなります。分かりにくそうな場合は、伸びている箇所に触れてあげるといいでしょう。ゆっくりリラックスした状態で、落ち着いて行うことが重要です。簡単なヨガなども効果的です。親子ヨガなども楽しいですね。
このように、体を動かし方を学べるトレーニングは無数にあります。
おにごっこやアスレチック、キャッチボール、バドミントンなども楽しく体を動かせるゲームになります。子どもが楽しんで取り組める運動を見付け、「できた!」という達成感を感じさせる機会をたくさん作ってあげましょう。
子どもは楽しく体を動かしながら、少しずつ自分の体のことを理解していきます。
運動が苦手だから外で遊びたくない・・・体育の授業を休みたい・・・となる前に、運動って楽しいんだよということを教えてあげましょう。大人も子どもと一緒になって楽しんで遊ぶことも大きなポイントです。
発達障害児のこんなときどうする!?「体育や運動が苦手」①
発達障害児の、こんなときどうする?コーナーです。このコーナーでは、具体的なお悩みを元に、発達障害児の理解の仕方や、支援方法などをまとめていきます。
今回は、「体育や運動が苦手な発達障害児」に対する支援方法についてです。
発達障害がある子どもは、運動がとても苦手な子どもがいます。体の使い方が明らかにぎこちなかったり、手足の協調がとれていなかったりするため、運動に苦手意識を持ちがちで、徐々に運動するのを嫌がるようになり体育も見学したいと訴え始めます。
このような発達障害児の体育や運動問題には、どのように対処していったらいいのでしょうか。
体育や運動が苦手な原因
発達障害児の中には、明らかに周りの友だちと同じような動きができず、運動や体育に苦手意識を持っている子どもがいます。特に、縄跳びや、ボール運動が苦手だったり、音楽やリズムに合わせて体を動かすことが苦手だったり、動き方もぎこちないことが多いです。この原因はいくつかあります。
①ボディイメージが弱い
発達障害の特徴としてあげられる、感覚の鈍さが原因で、ボディイメージが弱く、思ったように体を動かすことができないことが原因となっているケースです。
「ボディイメージ」とは自分の体や部位や動きを意識する力のことです。このボディイメージが弱いと、体のどこを今動かしているかといったことや、体のどこを今触られているかということがすぐに分からないことがあります。
このようなボディイメージの弱さから、「こう体を動かしたい」と子どもが思っていても、上手に体を動かすことができないため、運動の苦手感につながります。
②筋肉の緊張・弛緩のコントロールができない
指先や腕、足などに力を入れたり、逆に力を抜いたりというコントロールがうまくできず、姿勢がすぐに崩れてしまったり、スムーズな動きができなかったりします。また、いつも筋肉が緊張状態にある子どもは、力を抜くことができず、すぐに疲れてしまうことがあります。
これは、筋力が弱かったり、緊張と弛緩のコントロールが苦手なことが原因で、動きがぎくしゃくしたり、疲れやすくなる原因です。
③人の動きを見てまねるのが苦手
先生や友だちの動作を見て、それを自分でまねることがが苦手な子どももいます。視覚で捉えた情報を自分の体に置き換えて再現することが難しく、「このポーズしてみて」と言われても、できないことがあります。
「体育や運動が苦手な発達障害児」に対する支援方法
①できないことを責めない
自分ができないことや、他の子どもと違うことは、自分が一番よく分かっています。一生懸命頑張っているのに、「どうしてできないんだ」「やる気がないんだろう」と責められると、子どもはますます劣等感を感じ、「どうせ自分はできない」と練習の意欲もなくなっていきます。
頑張っている事実を認め、励ましてあげることが必要です。
②一人で練習させるよりも指導が必要
むやみに練習時間を確保するだけでは、できるようになりません。特に発達障害をもっている子どもは、自分で自分の体を思い通りに動かすことが苦手なので、どこをどう直せばできるようになるかも分かっていないケースが多いです。苦手な部分をカバーするような練習が必要となるため、大人と一緒に考えながら練習する必要があります。
③できそうなことからスモールステップで
到達目標を下げることで、「できた!」という体験を多く経験させてあげるようにします。縄跳びの跳ぶ回数を減らしたり、ボールが投げられない場合は、ボールを転がすというところからスタートしたり、簡単な課題から徐々にスモールステップを踏めるように段階を設定してあげると、意欲を持ち続けることができるでしょう。
④楽しく運動ができる機会を増やそう
できないことを克服するための「特訓」や「トレーニング」ではなく、楽しんで体を動かせる機会をおおく作ってあげましょう。そうすることで、発達障害があっても子どもは徐々に体の使い方を学んでいきます。
家族でアスレチックに遊びにいったり、公園で追いかけっこをするだけでもかまいません。子どもが笑顔で「運動って楽しいんだ」「体を動かすことは楽しいことだ」と感じられることが一番です。
上手か下手かに関係なく、体を動かすことは楽しいし、もやもやした気分も発散されるという感覚を味あわせてあげることが、将来のためにも大切です。