他人の意図を理解する能力があるかどうかがわかる「心の理論」とは?
発達障害を持つ子どもは、他人の考えていることを推測することが苦手です。そういった他人の意図を理解する能力として「心の理論」というものがあります。今回はこの「心の理論」について詳しくみていきます。
「心の理論」とは?
他人の意図を理解する能力のことを「心の理論」と言います。脳の前頭葉が関わっていると考えられており、通常4歳頃に獲得されます。
私たちは、他人と関わるとき、コミュニケーションを取るときに、「こう言ったら相手はこう感じるだろう」「これを言うと傷つけてしまうかもしれないからこう言おう」「相手はこうしたいと思っているな」などと、自然に相手の心や意図を推測しながら会話しています。
ところが、「心の理論」が形成されていない場合、他人の心や意図が分からないままコミュニケーションをとり、悪気はないのに相手が嫌がることを言い続けてしまったり、自分勝手な子と印象を持たれてしまったりします。これは、自分の言ったことが相手にどう伝わるかということを想像することができないために起こり、こういった状態を「心の理論」が形成されていないと捉えることができます。
心の理論が形成されているかどうかは「サリーとアンの課題」で調べることができます。これは、イギリスの自閉症研究者バロン・コーエンらによって作成された課題です。
「サリーとアンの課題」
1.問題
①サリーとアンはとっても仲良し。サリーはおもちゃ箱を持ち、アンはかごを持っています。
②サリーは遊んでいた人形を自分のおもちゃ箱にしまい、外に出ました。
③アンは、サリーがしまった人形をおもちゃ箱から出して遊んだ後、人形を自分のかごにしまいました。
④サリーが外から帰ってきて、再び人形遊びをはじめようとしました。
質問:さて、サリーは最初にどこを探すと思いますか?
2.結果
「おもちゃ箱の中を探す」と答えた場合、「心の理論」が形成されている。
「かごの中を探す」と答えた場合、「心の理論」が形成されていない。
いかがでしたか?この課題を自閉症の子どもに行うと「かごの中を探す」と答える子どもが多いことが分かっています。これは、サリーの立場になって物事を考えられておらず、前頭前野の働きが弱いために起こる現象だと考えられています。
また、同じ前頭前野では「ワーキングメモリー(作業記憶)」の働きも担っています。ワーキングメモリーについては、こちらの記事を参考にしてくださいね。