ソーシャルスキルトレーニング実例集②「人前で発表する」
今回は、ソーシャルスキルトレーニングの実例②を紹介していきます。
今日紹介するソーシャルスキルは、人前で発表する力を中心に、待つことや、座ること、聞くことのトレーニングになります。スモールステップの考え方で、少しずつでも楽しんで取り組めるようにすることがポイントです。
発達障害のある子どもは、発表するという行動に対して、言語能力の弱さの問題、適切な発表態度や言葉遣いの問題、適切なテーマの選択や量の調整の問題など、多くの問題や困り感を抱えていることが多いです。
うまく話せなかった経験が積み重なると、「人前で話す」ことへの抵抗感も大きくなります。できるだけ早い段階から話す内容、話す態度、ことばづかい、聞く姿勢などのスキルを身につけておくことが必要です。
スピーチ
1.インタビュー形式
今日のテーマを決め、司会者主導によるインタビューを行います。
司会者:これからインタビューをはじめます。好きな色はなんですか?
子ども:好きな色は、青色です。
司会者:ありがとうございました。これでインタビューを終わります。
※子どもが慣れてきたら、「どうして青色が好きなのですか?」など、突っ込んだ質問をしていきましょう。
2.話型スピーチ
スピーチをする人は前に出て、話型を見ながら、話型に当てはめた話をします。はじめは一文、慣れてきたら少しずつ量を増やしていきましょう。
「今からスピーチをはじめます」で話し始め、「これで終わります」で締めくくります。
※話型の例
「(ぼく・わたし)が好きな食べ物は○○です。」
「(ぼく・わたし)の将来の夢は○○です。」
「(ぼく・わたし)の今頑張っていることは○○です。」
3.「いつどこでだれがどうした」スピーチ
「いつ、だれが、どこで、どうした」のパターンに当てはめてスピーチをします。
はじめはワークシートなどに記入してからスピーチを行いますが、慣れてきたらその場で考えて話せるように練習すると良いでしょう。ここでも、「今からスピーチをはじめます」で話し始め、「これで終わります」で締めくくるようにします。
話すときの姿勢や、声の大きさは事前に指導し、スピーチ後に質問コーナーを受け付けると、子ども同士の言葉のやり取りが増え、コミュニケーションの練習にもなります。
声の大きさの指導法
声の大きさの指導は、抽象的なもののため、発達障害を持っている子どもに伝わりにくいことがあります。そういったときは、こえの大きさを数値化して表す「声のものさし」が有効です。
0・・・しずかに
1・・・ひそひそ
2・・・おしゃべり
3・・・発表
4・・・外で遊ぶ
ソーシャルスキルトレーニング実例集①「言葉のやり取り」
今回は、ソーシャルスキルトレーニングの実例を紹介していきます。
今日紹介するソーシャルスキルは、他人との言葉のやり取りを中心に、待つことや、座ること、人前で話すこと、ヒントから推測することのトレーニングになります。
ソーシャルスキルトレーニングは、ゲーム感覚で楽しんで取り組めるようにすることがポイントです。
このようなスーシャルスキルトレーニングのゲームを通して、子どもたちは、友だちとの言葉のやり取りの基礎を学ぶことができます。
言葉でのやり取りは、言葉を理解する、言葉を表現するといった言語機能に加え、相手の話を聞いて受け入れたり、応じたりするといった社会性が必要になります。
1.箱の中身はな〜んだ?
ゲームの目的
相手の答えを予測して質問を考え、それを言葉に表す活動を通して、ことばのやり取りの仕方を学ぶ。
ゲームのやり方
①プレイヤー(箱の中身を当てる人:1人)とヒントマン(箱の中身のヒントを与える人:1人以上)に分かれる。
②指導者は、箱の中に入れるカード(食べ物や、文房具などが書かれたもの)をヒントマンにだけ見せてから、箱の中に入れる。
③プレイヤーはいろいろな質問ができるが、ヒントマンは「そうです」「違います」のどちらかでしか答えられない。ヒントマンが複数名いる場合は、全員で声を揃えて言う(「せーの!そうです」)
④プレイヤーは答えが分かったら手を上げてから、答えを言う。
※ゲームの流れや質問の仕方など、言葉で説明するだけでなく、実際に大人がやってみせるモデリングで示すと良い。
※ヒントに結びつくような質問を考えやすくするために、「質問ヒントカード」を用意しておく。もちろん「質問ヒントカード」がなくても、質問が考えられる子どもには不要。
2.隠してるものな〜んだ?
ゲームの目的
相手の答えを予測して質問を考え、それを言葉に表す活動を通して、ことばのやり取りの仕方を学ぶ。
ゲームのやり方
①隠す人(1人)とプレーヤー(答えを当てる人:1人以上)に分かれる。
②指導者は、隠す人と相談して隠すものを決めて、プレイヤーに見えないように隠す。
③プレイヤーはいろいろな質問ができる。
④プレイヤーは答えが分かったら手を上げてから、答えを言う。
※ゲームの流れや質問の仕方など、言葉で説明するだけでなく、実際に大人がやってみせるモデリングで示すと良い。
※隠すものを選べない子どものためにあらかじめいくつか用意しておく。(文房具・ビニール袋など)
※質問が考えやすいように「質問キーワード」をいくつか書いておき、それを見ながら質問を考えられるようにいておく。(音→「それはどんな音がしますか?」・いつ→「それはいつ使うものですか?」)
ソーシャルスキルトレーニングの前に。発達障害児を理解するためのアセスメント
ソーシャルスキルトレーニングを行う際に大切なのが、一人ひとりに合った内容を、一人ひとりに合ったレベルに合わせて行うということです。
ソーシャルスキルの指導内容や指導方法には決まったパターンがあるわけではなく、その子どもの特性や状態に合わせて行います。そこで必要なのが、一人ひとりの特性や状態などを理解するためのアセスメント(実態把握)です。
ソーシャルスキルの指導内容・指導方法は一人ひとりの困難の背景(認知特性や障害特性)をきちんとアセスメントし、その子に適した指導を行う必要があります。
今回は、ソーシャルスキルトレーニングを行う前の、アセスメント(実態把握)についてみていきましょう。
アセスメントの方法
①行動観察法
直接本人を見て観察する方法。学習場面、休み時間、教室移動、休職や掃除のときの本人の様子を観察し、アセスメントを行う。
②面接法
関係者から情報を聞き取る方法。生育歴、現在の状況、方針などを子どもと関わっている関係者からそれぞれ話を聞き、アセスメントを行う。
③心理検査法
WISC-IV DN-CAS K-ABCなどの心理検査を行い、アセスメントを行う。地域の発達障害サポートセンターなどで心理検査は受けることができる。
④チェックリスト法
各機関で作成されたチェックリスト(LDIやADHD-RS、CBCL-TRFなど)でアセスメントを行う。
このように、子どもを一つの側面から観察するのではなく、様々な角度から観察することが必要です。習い事の先生や、学校の先生に様子を聞くことで、家では気付かなかった一面が見えてくるかもしれません。
社会性の弱さに関わる障害特性
ソーシャルスキルトレーニングの内容を決めていくにあたって重要になるのが、障害特性の把握です。どこに弱さがあり、どういったことに困り感を感じているのか、どういったことができるようになればその困り感を解消することができるのかを考えることによって、指導内容や方法、目標なども変わってきます。おさえておきたい障害特性は、以下の6つです。
①知的能力
知的理解力が低い子どもは、スキルの学びがゆっくりだったり、友だち同士の会話の流れが理解できず、ついていけなかったりします。
②言語能力
言語の理解や言語での表現などの言語能力に弱さがある子どもは、自己表現が苦手です。言いたいことがあっても言語に変換して発することができずに困り感を感じているケースがあります。
③ジョイントアテンション・心の理論
他者と注意を共有したり(ジョイントアテンション)、相手の気持ちを理解したり(心の理論)することが苦手な子どもは、状況に合わせた行動や人に合わせることが苦手です。
④こだわりや切り替え
自分の考えや、自分なりの行動パターンにこだわりやすい子どもは、融通が利かず、うMacスキルをはっきできません。また、行動や考え、気持ちの切り替えも苦手です。
⑤注意集中・衝動性のコントロール
不注意・衝動性はADHDだけではなく、LDや自閉症スペクトラムの子どもにもよく見られます。わかっているのに、不注意なミスを繰り返したり、行動を抑制できなかったりします。
⑥情緒の不安定
家庭や学校での問題から、気持ちの面に問題を抱えている子どももいます。情緒不安定だったり、注意をされても上手に受け止められないことが多いです。
このように、発達障害を持った子どもは、様々な特性によってソーシャルスキルに問題を抱えていることが分かります。
いろいろな面から子どもの特性や困り感を理解し、どういった力をつければ、その困り感が解消するのかを考えることがソーシャルスキルトレーニングを行っていく前の第一歩です。
育児中の最大の敵はこいつだ!子育て中のイライラの原因
先日、こんなことがありました。
ねんねの時間。次男(生後7日)が泣いて、長男(2歳2ヶ月)がそれに反応してなかなか寝なくて、自分はまだお風呂にも入れず汗ベタベタ。
— ka7a-mama (@ka7aa1988) 2017年7月19日
久々にうぁーーーってなった。
子育て中の皆さんには「あるある」ですよね。
うぁーーーってなったり、
イライラしたり、
そんな自分に自己嫌悪になったり…
そんなka7a-mamaの子育てにおいての最大の目標はこちら!
「子育てを楽しむ」
「子育てを楽しむ」
— ka7a-mama (@ka7aa1988) 2017年7月24日
確かに子育ては大変なことが多い。けど、楽しいことも幸せなこともたくさんあることは確か。大変なことに焦点を当てるか楽しいことに焦点を当てるか。どうせなら楽しいことに焦点を当てて「楽しもう」とすることが大事かなって私は思う。、
でも、うぁーーーってなったり、
イライラしたり、
そんな自分に自己嫌悪になったりしてるときとか、
全然「子育てって楽しい*\(^o^)/*」なんて気分ではさらっさらありません。
「楽しい」方に焦点を合わせられないのです。
「大変(T_T)大変(T_T)もういやーーー(T_T)」
では、何が「子育てを楽しむ」ことを阻もうとするのか…育児中の最大の敵とは…??
育児中の最大の敵は・・・?
ズバリ!睡眠不足です!!!
睡眠がきちんと取れてるときだったら、
ちょっと長く泣かれても、
イヤイヤ期真っ只中の2歳児が「いやいや」言ってようと、
陰でごちゃごちゃと変なことをやってようと、
「泣きたい時だったんだね〜。」
「まぁそういうときもあるか。」
「やりたかったんだね〜。」
って流せるんです。
でも、
あまり寝れてないとき、
子どもとお昼寝しようと思ったのにできなかったときなどの睡眠不足のときは、
こっちの余裕がなくて、いろいろなことを流せないんですよね。
子どもにも、夫にも、そして、「暑い」とか「散らかってる」とかいう現象にもイライラしてきます笑
育児中の敵を倒すためには?
子どもが1人しかいない場合は、簡単です。
家事や旦那さんのお世話を放り出して、睡眠優先にしましょう!
少し罪悪感があるかもしれませんが、睡眠不足になって、イライラして、子どもや夫にイライラをぶつけてギスギスした雰囲気の家庭より、平和で穏やか、ママが笑顔でいる家庭の方がいいですよね!子ども小さい今の時期だけ。と割り切ってしまいましょう!
子どもが2人以上いる場合は、1人ではなかなか対処できませんよね…下の子が寝たと思ったら上の子の遊び相手。上の子のお昼寝タイムに下の子が泣き出す…なんてよくあることです(T_T)
二人育児真っ只中の私が、今一番もらって嬉しいプレゼントは、「自由な時間」です!
世の中のパパさん。オムツ替えだけ、ミルクやるだけ、ちょっと遊び相手になるだけ、などのちょこっとお手伝いサポートではなく、1時間でもいいのでゆっくり寝られる環境を作ってあげることをオススメします。
「子供が産まれると女性は変わってしまう」
そんな言葉を聞いたことがありますが、女性だって好きでイライラしているわけではありません。毎日睡眠不足の中慣れない育児をしていると余裕がなくなって、イライラなんてしたくないのに家族にあたってしまうなんていう女性もいると思います。
「結婚」にあぐらをかいているだけの女性も多いような気もしますが・・・(^^;)笑
二人育児が始まって睡眠不足気味のka7a-mamaでした!
社会性を育むためのソーシャルスキルトレーニング(SST)って何するの?
ADHDや自閉症スペクトラムなどを持った発達障害児は、人とのコミュニケーションや距離の取り方などが分からず、社会性に問題を抱えているケースが多いです。
また、発達障害児に限らず、人との接点が少なくなっている現代では、他人の気持ちを考えたり、推測したりすることが苦手な子どもも多くなっている気がします。
そんなときに効果的なトレーニング方法が「ソーシャルスキルトレーニング」で「SST」とも言われます。
いったいどんなトレーニング方法なのでしょうか。
ソーシャルスキルトレーニングとは?
1.ソーシャルスキルとは?
ソーシャルスキルとは、人間関係を上手に営んでいくための技能のことです。
私たちは、日常的に他人と関わり合う中で、様々なことを無意識のうちに考えながら行っています。
例えば、初めて会った人と挨拶や自己紹介をしたり、会話する人との距離の取り方や、話す声の大きさなどです。これらは、人間関係を築き上げる中で必要な能力です。もし、会っても挨拶しない、話そうとしても必要以上に距離の取り方が近すぎたり遠すぎたり、または、声が極端に大きい小さいなどがあると、なかなかその人と会話したいという心情にはなりませんよね。
このように人と関わる上での基本的なことから、会話の中に冗談を入れて場を和ませるなどといった能力をトレーニングすることを「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」と言います。
2.ソーシャルスキルを完璧にする必要はない!?
ソーシャルスキルは、人とかかわり合う中で必要な能力ですが、必ずしも得意にならなければならない能力でもありません。一人ひとりの人間関係の築き方はありますし、苦手なことを得意にしようと頑張る必要もありません。ソーシャルスキルの得意不得意は、障害有る無しに関わらず個人差が大きいものです。
しかし、他人に不快感を与えるような行動は改める必要があります。他人に不快な思いをさせることがない自分のスタイルを身につけることが最終目標と言えるでしょう。
3.ソーシャルスキルトレーニングの流れ
ソーシャルスキルトレーニングは、①教示、②モデリング、③リハーサル、④フィードバック、⑤般化の5つを組み合わせながらプログラムを組み立てていきます。一つずつ見ていきましょう。
①教示・・・言葉や絵カードを使って教える。
②モデリング・・・親や教師、友だちなどが、手本となる振る舞いを見せる。
③リハーサル・・・ロールプレイングなどで実際にやってみる。
④フィードバック・・・行動を振り返り、褒めたり、修正を加えたりする。
⑤般化・・・どんな場面でもできるようにする。
このような流れでソーシャルスキルを学んでいくのですが、かの有名な山本五十六のこの言葉に、共通する部分を感じることができます。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
この言葉は教育の本質を表しているんでしょうね。
自閉症スペクトラム障害の特徴
今回は、自閉症スペクトラム障害の子どもによく見られる行動特性についてまとめていきます。ただし、自閉症スペクトラム障害は、名前の通り、明確な境界線がなく、連続した線上でつながっているという考え方です。ですから、「こうだったら自閉症スペクトラムである」と言い切ることはできないため、注意が必要です。
自閉症スペクトラム障害の特徴
1.ことばが遅い
2〜3歳になってもことばを発さないなど、明らかなことばの遅れがみられます。ただし、高機能自閉症の場合は、ことばの習得は遅い場合もありますが、しだいに問題なく話せるようになる子どもが多いです。
2.目をあわせない
他者と目を合わせようとしないのも自閉症の特徴です。親が赤ちゃんの目を見て笑いかけたり、あやしたりすると、通常であれば笑ったり喜んだりしますが、そういった反応がみられません。
3.特定のものへの執着・こだわり
時間割や道順、ものの位置、動作や作業の手順、行う場所についてなど、さまざまなこだわりがあります。また、予定外の自体が生じたりすると、不安や緊張が高まり、パニックになる恐れもあります。
4.感覚過敏(または鈍麻)
音や光、温度、触られた時の感じ方などが他の人とは異なり、独特の感覚をもっています。
5.指差ししない
幼い子どもは指差しをすることで「あれ取って」と訴えることが多いのですが、自閉症の子どもは指差しをして要求することがありません。その代わりに、親の手首を掴んで要求しているもののあるところまで引っ張っていく行動がよくみられます。この行動は「クレーン現象」と呼ばれています。
6.常同行動(繰り返し行動)
自閉症の子どもは、視覚・聴覚・触覚・味覚などの働き方が普通の人とは異なります。そして、その独特の感じ方によって得られる刺激が、本人に取っては好ましいものであるために、その刺激を受け続けようと、一定の行為(動作)を繰り返し行うことがあります。このような行動のことを、常同行動(繰り返し行動)といいます。
具体的な常同行動としては、手をひらひらさせる、手をぱちぱちさせる、つま先立ちで歩く、上半身を前後に揺する、ぴょんぴょん飛び跳ねるなどがあります。こういった常同行動は、子ども自身がストレスを軽減させるために行っているケースが多いようです。
7.細部にこだわる
物事全体を俯瞰的に見ることが苦手で、細部にこだわる傾向があるのも、自閉症の特徴の一つです。例えば、掲示物が少し傾いて貼られていると、我慢できずに貼り直したり、机の位置が1cmでもずれていると気になって直したりするケースもあります。
8.流水・回転するものが好き
常同行動の一種とも言えますが、流れる水や、扇風機のような回転するものを好む傾向があり、そういったものをいつまでもじーっと見続けることがあります。
9.呼んでも振り向かない
自閉症の場合、多くの情報の中から、自分に必要な情報を選択して取り上げ、不要な情報を捨てるということが苦手です。たくさんの音が聞こえている中で自分の名前が呼ばれても、その名前に注意を向けることがなかなか難しく、気づかない場合が多いです。
10.迷子になりやすい
自閉症の場合、関心の向くものがあると、躊躇なくそちらに行ってしまうことがよくあるため、迷子になりやすい傾向があります。また、ワーキングメモリーの働きに弱さがあるため、親と一緒にいる自分がはぐれてしまったらどうなるかという状況把握ができず、こういった行動をとってしまうのだと考えられています。
11.パニックになりやすい
自閉症の子どもの場合、感覚過敏のために、パニックになってしまうことがあります。大きな音や、急に触られたことから不快を感じてパニックになることがあるため、そのパニックの原因を探り、できるだけその感覚を刺激しないように配慮してあげることが大切です。
このように、自閉症スペクトラム障害には様々な特徴がありますが、特徴の現れ方も程度も個人差があります。診断名に惑わされず、子どもをよく観察して、本人の困り感やつまずきに気づき、対応していくことが大切です。
ASD(自閉症スペクトラム)って何?アスペルガー症候群とは違うの?
自閉症は、1943年に、アメリカのレオ・カナーによって報告された障害です。
当初は、知的発達を伴う重度の自閉症のみが「自閉症」と定義づけられていましたが、少しずつ変わってきています。
現在、アスペルガー症候群や、高機能自閉症、広汎性発達障害、高機能広汎性発達障害、特定不能の広汎性発達障害などといろいろと呼ばれてきたものは、全て「自閉症スペクトラム障害」に含まれます。
今回は、そういったASD(自閉症スペクトラム障害)について詳しくみていきます。
ASD(自閉症スペクトラム障害)って何?
「自閉症スペクトラム障害」とは、
「社会性の障害」
「コミュニケーションの障害」
「想像力の障害」
の3つが特徴に挙げられる障害のことを言います。
4対1の割合で男児に多くみられ、3歳頃までに行動特性が目立ち始めることが多いです。
1.自閉症スペクトラム障害に至るまでの経緯
従来、自閉症は、「社会性の障害・コミュニケーションの障害・想像力の障害の強さ(自閉の程度)」と「知的指数の高低(IQ)」で分類されていました。これが、1943年に、レオ・カナーによって発見された「自閉症」です。
IQが低く(〜IQ75程度)、自閉度が高いタイプを「カナータイプの自閉症(古典的自閉症)」と呼び、IQが低く自閉度が比較的軽いタイプを「自閉傾向のある知的障害」と呼んでいました。
そして、IQが高く自閉度が高いタイプを「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」「高機能広汎性発達障害」と呼び、「自閉症」とは別の障害であると分類されていました。これは、ハンス・アスペルガーが、ことばは流暢に話すことができるが、コミュニケーションや社会性、想像力に違和感のある子どもたちを発見し、後に「アスペルガー症候群」として、注目をあびます。
この時点では、二つの障害は別のものという考え方でしたが、「社会性の障害・コミュニケーションの障害・想像力の障害の強さ(自閉の程度)」の部分で共通する特徴があることが分かりました。そして、これらをひとまとめにしたものが「自閉症スペクトラム障害」と考えられるようにななったのです。
2.自閉症スペクトラム障害の考え方
「スペクトラム」とは、虹のような「連続体」のことを言います。これは、「自閉症」とはいっても、程度はバラバラで、話せないほど重い自閉症から、会話もでき、社会生活もできる軽い自閉症も含め、健常者までもが一つの連続体であるという考え方です。
「ここからここまでの人は自閉症」といった分類ができないことから、このような「連続したもの」と考えられるようになりました。同じ「自閉症スペクトラム障害」でも、「社会性の障害・コミュニケーションの障害・想像力の障害の強さ(自閉の程度)」の出方は様々で、十人十色なのです。
発達障害児が困難さを感じる「実行機能」とは?
自閉症やADHDなどの発達障害を持っている子どもは、実行機能に問題を抱えている場合が多いです。
一人で宿題を終わらせることができない、目的の場所にたどり着くことができない・・・
これは、実行機能の問題かもしれません。
一体、実行機能とは何でしょうか?今回は、実行機能について詳しくみていきます。
実行機能とは?
実行機能の定義
実行機能とは、目標を定め、その目標のために自己管理し、処理していく能力のことです。
簡単に言うと、目標に向かって臨機応変に対応し、実行することです。
通常私たちは、この実行機能を無意識のうちに働かせ、作業や課題をこなしています。
様々な物事を進めるにあたって基礎となる、日常生活や学習を支える大切な能力です。
ところが、発達障害のある子どもは、実行機能が弱く、様々な困難を抱えているケースが多いのです。
トーマス・ブラウン博士の「実行機能」
1.起動(やる気スイッチ)
2.集中
3.努力
4.感情コントロール(ストレスマネジメント)
5.記憶(ワーキングメモリー)
6.行動
トーマス・ブラウン博士によって、実行機能は6つの能力があると定義づけられています。実行機能障害といっても、これらの6つの能力のうち、どこに問題があるのかを見つけ対応していくことが大切です。
実行機能がうまく働かないと?
実行機能がうまく働かないと、様々な困難を感じることが多くなります。
約束を忘れる(守れない)
話に集中できない(人の話が聞けない)
人の話をさえぎって話す(わがまま)
大切なものをすぐになくす(責任感不足)
元に戻すのを忘れる(だらしがない)
急に変更する(計画性がない・うそつき)
ケアレスミスが多い(不真面目)
最後までやらず、途中で止める(勝手な行動)
このように、悪気があってした訳ではないけれど、された側からすると「ちゃんとしてよ!」と思ってしまうことが多々起こります。こういったことが原因で、他人とうまく関係を築くことができなかったり、自尊感情の低下を招くことになります。
最後に
実行機能が弱くても、環境を整えてあげることで、物事を進めやすくなることがあります。
悪気があってさぼりたいからしているわけではない。
ということを理解し、どうすればその子どもにとって困り感を取り除くことができるのかを考えることが必要です。
発達障害児の育て方ポイント!スモールステップ方式で考えよう
発達障害をもっていると、日常生活に困難を感じることが多く、身の周りのことができなかったり、宿題がはかどらなかったりします。
このようなときに決して放置せず、どうやったらその課題をクリアできるのかを大人が一緒に考えてあげることが大切です。
そのときに重要なのが「スモールステップ」の考え方です。
詳しくみていきましょう。
発達障害児の育て方ポイント
苦手なことは大人が支援しよう
計算や音読、作文などの宿題がなかなかはかどらないときには、自力で最後までさせるよりも要所要所で手伝ってあげる必要があります。
発達障害を持っていると、普通でも気が散りやすく、集中することが難しい場合が多いです。
その上苦手な課題を与えられ、できないことが続くと、「宿題をしよう」という意欲をなくしてしまいます。
支援は徐々に減らしていこう
そうはいっても、できないことを全て大人がやってあげても、それはそれで子どものためにはなりません。
一人でできないところだけを援助するようにし、本人の自立を促していくことが大切です。
また、子どもの意欲は、「できた!」という達成感を感じることで引き出されていきます。
常に大人に手伝ってもらっていると、「自分でできた」という達成感を感じにくく、「もっとがんばろう」といったやる気につながりません。
例えば、音読の宿題が苦手なのであれば、最初の一回は一緒に読んであげたり、一行ずつ交代で読んであげたりするといいでしょう。
しかし、常にその方法を続けるのではなく、最終的には一人で読めるように少しずつ支援を減らしていくことが必要です。
そして、少しずつできるようになっているところは、しっかりと子どもに伝え、成長していることを子どもが感じられるようにしましょう。
スモールステップとは?
スモールステップとは、最終目標に至るまでを細かい段階に分け、その都度小さな到達目標を定めます。
その小さな到達目標をひとつずつ乗り越えることで、最終ゴールに向かわせる方法のことを言います。
発達障害児にとって、大きな課題を与えることは「できない」が重なり、意欲の低下や自己肯定感の低下を招きます。
少し頑張れば到達できるだろうというところに目標を定め、一段ずつ階段を上っていくように成長を促すスモールステップの考え方はとても重要になってきます。
スモールステップのポイント
・目標は到達しやすいように低めに設定しましょう。
・一つのステップが達成できたら大いに褒めましょう。
・失敗してもしかったり責めたりしないようにしましょう。
・次のステップがなかなか達成できないときには、間にもうワンステップ加えましょう。
。長期的に見通しながら進めましょう。(ステップは後戻りしてもOK!)
最後に
このようにスモールステップの考え方を基本にしながら、子どもの「できた!」「分かった!」が一つでも増えるように支援することが大人の役目ではないでしょうか。こういった一つ一つの積み重ねから、子どもは自己肯定感を感じ、夢を持つことができるのです。