ソーシャルスキルトレーニングの前に。発達障害児を理解するためのアセスメント
ソーシャルスキルトレーニングを行う際に大切なのが、一人ひとりに合った内容を、一人ひとりに合ったレベルに合わせて行うということです。
ソーシャルスキルの指導内容や指導方法には決まったパターンがあるわけではなく、その子どもの特性や状態に合わせて行います。そこで必要なのが、一人ひとりの特性や状態などを理解するためのアセスメント(実態把握)です。
ソーシャルスキルの指導内容・指導方法は一人ひとりの困難の背景(認知特性や障害特性)をきちんとアセスメントし、その子に適した指導を行う必要があります。
今回は、ソーシャルスキルトレーニングを行う前の、アセスメント(実態把握)についてみていきましょう。
アセスメントの方法
①行動観察法
直接本人を見て観察する方法。学習場面、休み時間、教室移動、休職や掃除のときの本人の様子を観察し、アセスメントを行う。
②面接法
関係者から情報を聞き取る方法。生育歴、現在の状況、方針などを子どもと関わっている関係者からそれぞれ話を聞き、アセスメントを行う。
③心理検査法
WISC-IV DN-CAS K-ABCなどの心理検査を行い、アセスメントを行う。地域の発達障害サポートセンターなどで心理検査は受けることができる。
④チェックリスト法
各機関で作成されたチェックリスト(LDIやADHD-RS、CBCL-TRFなど)でアセスメントを行う。
このように、子どもを一つの側面から観察するのではなく、様々な角度から観察することが必要です。習い事の先生や、学校の先生に様子を聞くことで、家では気付かなかった一面が見えてくるかもしれません。
社会性の弱さに関わる障害特性
ソーシャルスキルトレーニングの内容を決めていくにあたって重要になるのが、障害特性の把握です。どこに弱さがあり、どういったことに困り感を感じているのか、どういったことができるようになればその困り感を解消することができるのかを考えることによって、指導内容や方法、目標なども変わってきます。おさえておきたい障害特性は、以下の6つです。
①知的能力
知的理解力が低い子どもは、スキルの学びがゆっくりだったり、友だち同士の会話の流れが理解できず、ついていけなかったりします。
②言語能力
言語の理解や言語での表現などの言語能力に弱さがある子どもは、自己表現が苦手です。言いたいことがあっても言語に変換して発することができずに困り感を感じているケースがあります。
③ジョイントアテンション・心の理論
他者と注意を共有したり(ジョイントアテンション)、相手の気持ちを理解したり(心の理論)することが苦手な子どもは、状況に合わせた行動や人に合わせることが苦手です。
④こだわりや切り替え
自分の考えや、自分なりの行動パターンにこだわりやすい子どもは、融通が利かず、うMacスキルをはっきできません。また、行動や考え、気持ちの切り替えも苦手です。
⑤注意集中・衝動性のコントロール
不注意・衝動性はADHDだけではなく、LDや自閉症スペクトラムの子どもにもよく見られます。わかっているのに、不注意なミスを繰り返したり、行動を抑制できなかったりします。
⑥情緒の不安定
家庭や学校での問題から、気持ちの面に問題を抱えている子どももいます。情緒不安定だったり、注意をされても上手に受け止められないことが多いです。
このように、発達障害を持った子どもは、様々な特性によってソーシャルスキルに問題を抱えていることが分かります。
いろいろな面から子どもの特性や困り感を理解し、どういった力をつければ、その困り感が解消するのかを考えることがソーシャルスキルトレーニングを行っていく前の第一歩です。