前回からの続きです。こちらからどうぞ。
今回は、一人ひとりに合わせた教育を受けられるB市の特別支援教育の現状やその問題点を挙げていきたいと思います。
特別支援教育が進んでいて多くの支援が受けられるといって人気のB市でしたが(支援目的で引越して来る人もいました!)、それでも問題点はたくさんありました。
B市公立小学校特別支援教育の問題点
①圧倒的な教師の不足
小学校という場においての問題点は、これに尽きると言ってしまってもいいでしょう。というくらい圧倒的な教師の不足が挙げられます。
子どもたちの苦手な場面は、一人ひとり多種多様であり、様々なサポートが必要です。しかし、通常学級では、40人の子どもに対してクラス担任が1人、特別支援学級に在籍していたとしても、6人の子どもに対して特別支援学級担任が1人、というクラス編成になります。
6人の子どもに対して教師が1人付くなら手厚いではないか・・・と思われた方もいるでしょうが、その6人は、クラスも学年も基本的にはバラバラです。従って、時間割もバラバラ、様々な学校行事の際もバラバラなのです。その中で、
「この子にはつかないと大変だ」
といった子どもを厳選して優先的にサポートする、という形になります。
そして、教師の「大変だ」の認識基準は、
行事や授業の妨害をしてしまう、他の子どもたちの邪魔になる(妨げになる)
といったところにあることが多いです。したがって、他の子どもたちの邪魔にはならないおとなしい子(指示が分からず困っていたとしても)は、必然的に後回しになってしまうのです。
もちろん、現場の教師もこれでいいとは思っていません。そばで見てあげたい子どもたちはたくさんいるのです。困っているということも分かっています。多くの教師はもっときちんと一人一人を丁寧にみてあげたいと思っていることも事実です。しかし、そこを見てあげるための手と余裕がないのです。
このように、一人ひとりのニーズに合わせた教育を目指している特別支援学級であっても、その恩恵を受けられるのは限られた子どもであると言えるでしょう。通常学級にいる子どもたちはこの限りではないことは分かりますよね。
②教師の知識不足・能力不足
これは、本当にその教師によるところが大きいのですが・・・
基本的に、小学校の特別支援学級担任であったとしても、特別支援教育のスペシャリストである。という教諭はほとんどいません。特別支援教育を専門にやってきた方は、特別支援学校や施設に行ってしまう場合が多いです。全員というわけではありません。もちろん、特別支援教育を専門としてやってきた小学校教諭もいることはいます。勉強熱心で、一人ひとりのサポートを考え、実践しておられる尊敬すべき教諭もいます。
が、実際の現場では、40人学級を持っても崩壊させてしまう、あまり力のない教師が特別支援学級担任に回される、といったこともよく起こる現実です。一人で子どもたちをまとめる必要がなく、複数の目で子どもを見ることができるからです。そういった教師は、勉強会に参加することも少なく、新たな知識を習得することも少ないけれど、給料だけはしっかりもらう・・・それでも成立してしまうのが、公務員なんですよね・・・。
また、通常学級担任の教諭によっても、発達障害に関する知識があり、理解のある教諭もいれば、そうでない教諭もいます。学級担任と、特別支援学級担任がうまく連携し、すすめられると良いのですが、実際の経験上なかなか難しいというところが私の見解です。
③学習内容
学校での学習は、基本的に文部科学省によって定められています。1年生ではここまで、2年生ではここまでなど、具体的に単元が定められ、学習指導要領に記載されています。
その学習指導要領にそって、学校では授業が進められていくのですが、やはり、子どもたちには一人ひとり、苦手な部分と得意な部分が存在します。しかし、なかなか学校教育という集団の中では、一人ひとりのニーズによって進度を変えていくわけにもいきません。
授業時間は削減され、教える内容は増加している現在、なかなか立ち止まって考える余裕はなく、教科書を進め、評価のためのテストをする。できる子はできるし、できない子はできない。そういった流れを感じます。
確かに、様々な子どもたちがいる小学校教育で、すべてをまかなうことはできません。家庭や地域にお任せしなければならない部分も大いにあるのですが、そこの部分も、両親の共働きの増加、核家族化、地域のつながりの希薄化などから、昔よりも弱くなっているのではないでしょうか。
なかなか難しい小学校での個別対応
一人ひとりのニーズに合わせた教育をうたっている特別支援教育。
通常学級と比べれば、確かに個別に合わせた学習を進めようとはしています。しかし、教師の不足などの現状から、B市の公立小学校でも、「抽出」の時間は国語と算数に限られていました。それ故に、漢字もほとんど読めない子どもなのに、社会や理科の時間は、教室で、みんなと同じ授業を受けていたのです。もちろん、内容を理解し、楽しむことはできませんよね・・・
それに、多くの学級への入り込みがあるため、「抽出」時間の教諭も一定ではなく、学習内容や教え方も連続した流れで進めることにも限界がありました。
学校という集団の中ですべてを網羅することは、難しいことは分かっています。しかし、このようなわけもわからない授業に参加し、テストを受ける・・・そんな時間に苦痛を感じている子どもたちは、本当にたくさんたくさんいるのではないかと思います。そのような時間を、その子に合わせた学習、将来の日常生活に役立つ学習をする時間にあてられれば、もっともっと成長し、「やればできるんだ」「できるって楽しい」と思えるのではないでしょうか。
「勉強=難しい、やってもできない」と感じているような勉強が嫌いな子どもも、個別にレベルにあった学習することで、「勉強=がんばったらできるようになる、楽しい」と感じ、勉強が好きになる子どももいます。そういった子どもを、私は増やしていきたいのです。
学校教育という集団の中だからこそ、学べることもたくさんあります。しかし、現在の公立小学校で行われている集団教育、一斉授業には多くのデメリットの部分も抱えています。学校教育という集団の中だけでは、どんどん勉強が嫌いになる、集団が嫌いになってしまう子どもたちもたくさんいるように感じてきました。
「勉強ができるようになりたい」
「友だちたくさんつくりたい」
「ほめられたい」
全ての子どもたちはこう思っています。
そのためには、どうすればよいか。
一人ひとりに合わせたやり方を個別学習といった形で一緒に考え、実践し、習得していくことで、より楽しい学校生活、日常生活、そしてより素敵なその子らしい人生につなげていくことができるのではないでしょうか。