ソーシャルスキルトレーニング実例集③「注意を向けて聞く」
今回は、ソーシャルスキルトレーニングの実例③を紹介していきます。
今日紹介するソーシャルスキルは、注意を向けて聞く力を中心に、待つことや、座ること、意見を発言することのトレーニングになります。スモールステップの考え方で、少しずつでも楽しんで取り組めるようにすることがポイントです。
発達障害児の「聞く力」について
発達障害のある子どもは、「聞く」という行動に対して、言語能力の弱さや言葉の理解能力の低さの問題によって話の内容が理解できなかったり、集中力や注意力の問題によって話を最後まで聞けなかったり、ワーキングメモリーの問題によって長い話についていけなかったりなど、多くの問題や困り感を抱えていることが多いです。
また、「聞く力」は、授業や友だちとの会話など日常生活において欠かせない能力です。しかし、「聞く」という行為は、黙って座っていれば聞いている風に見えるため、大人しい子どもの場合気付きにくいことがあります。
「うん、うん。わかった。」と言っていても、実は言っているだけで全く理解していないというパターンもあるのです。こういった場合、その子どもにとって、話が理解できないことが当たり前になってしまい、ますます「話を聞く」という行為から遠のいてしまいます。できるだけ早く「聞く力」の困難の原因を探り、対策を練ることが必要です。
言葉当てクイズ
目的
ことばを発する人に注意を向け、何を言っているのか集中して聞けるようにする。
ゲームのやり方
①2〜3人が前に並んで立ち、ルールの説明をします。
「これからそれぞれ同時に違う言葉を言います。よ〜く聞いて、誰がなんと言ったのかを当ててください。」
②着席している子どもたちに向けて、「せーの」で同時に異なる言葉を言う。
Aさん「うし」 Bさん「うま」 Cさん「くま」
③答えが分かった子どもは手を上げて、当てられたら答える。他の子どもも「同じです」「違います」のどちらかで反応する。
「Aさんが○○と言いました。」
「同じです(違います)。」
ポイント
・ゲームの流れや質問の仕方など、言葉で説明するだけでなく、実際に大人がやってみせるモデリングで示すと良い。
・はじめから3人同時が難しい場合は、1人→2人→3人と徐々に増やしていく。
・聞き分けるコツとして、「誰か一人の口元に注目して聞くと分かりやすい」などのヒントを伝える。